「ごはんとひとしごと」で販売中の「カレーパン」。早いもので、発売開始から3年目を迎えました。
ことのはじまりは、2021年春のこと。インザラフの近くにあるインド料理店「ガネーシャガル」が、キッチンカーでインドカレーのカレーパンを販売したいと思ったのがきっかけでした(詳しくは「西荻カレーパン物語」をご覧ください)。
今回は、そんな「カレーパン」をいっしょに作っているガネーシャガルさんのお話です。
インド料理店というと、ネパールやパキスタン出身の方がやっているお店が多いですが、ガネーシャガルのオーナーは、日本人の松岡さん。なぜ、日本人がインド料理のお店を開くことになったのか、インド料理のこと、カレーパン作りへの想いなど、松岡さんにお話を伺いました。
「以前、パキスタン人がオーナーのインド料理店で働いていました。ビザのことでオーナーと従業員の間でトラブルがあって、店は一時解散。コックだったブッダさんと一緒に店を探すことになったのがはじまりです 」
ネパール出身のブッダさんは、インドの名店で腕を磨き、日本でコックとして働いていました。彼の料理の腕と人柄に惹かれ、一緒にお店を開くことに。
「今は、どこにでもインドカレー屋さんがありますが、当時はまだ少なく、なかなか店舗を貸してくれるところ見つからなくて、あちこち探して回りました」
そんなときに訪れるようになったのが西荻窪でした。
「西荻窪は土地勘もなかったのですが、何度か訪れるうちに、特別な場所に思えてきたんです。聞いたことも見たこともないような小さなお店が、隠れるように独自の空間を作っている。地下だったり、2階だったり、駅から遠かったり、商店街から外れていたり。そんなお店を見つけるのが嬉しくて」
まるで宝石箱のようなに思えた西荻窪の街。次第に「この街で、自分も輝きたい」と思うようになったそうです。
そして、2003年4月にガネーシャガルをオープン。
「わからないことだらけで、苦労もたくさんありましたが、スタッフと一緒に一からお店を作り上げていきました」
ガネーシャガルという店名は、スタッフが考えたもの。ガネーシャ(Ganesha)は、象の頭を持ったインドでも人気の神様で、ガル(Ghar)には家、館、棲家の意味があります。
開店以来、お店を運営することに追われ、なかなか周りを見る余裕がなかったという松岡さん。2017年に行った店内改装を機に、次第に商店街や西荻窪のお店の方々との交流も増えていったと言います。
「改装のときには、西荻の情報発信やイベントを企画している「西荻案内所」さんに声をかけていただき、西荻の人たちに助けてもらいました。休業中、間借り営業をしたり、ネパール料理教室をしたり、普段できない事もたくさんやりました」
店内の壁には西荻在住のイラストレーター、ハラダエリコさんが絵を描いてくれることに。ヒマラヤの山々に住む動物たちと、ガネーシャ神が楽しく踊る様子を描いた壁画は、店内に華やぎをもたらし、子どもたちにも人気となりました。
松岡さんのお気に入りはツルの絵。
「テレビで、ヒマラヤを超えて越冬するツルの話を知って、すごく印象に残っていたので、陽の光を浴びて、ツルの羽が七色に輝いているところを描いてもらいました。スタッフの故郷、ネパールのヒマラヤとツルを描いてもらえて、とても気に入っています」
「カレーパン」作りも、西荻のつながりの中から生まれたものでした。
「インザラフさんと知り合うことができて、カレーパン作りという新しいことに挑戦できました。しかも、みんなで作ったカレーパンが、カレーパングランプリの金賞を受賞するなんて!スタッフにもよい刺激になり、大きな喜びになりました」
(前列右端が松岡さん。ガネーシャガル、インザラフのスタッフと)
カレーパン作りも3年目。今、新たなカレーパンを作ろうと、再び挑戦がはじまり、いっしょに試行錯誤を続けています。
松岡さんにとってインド料理の魅力はどんなところなのでしょう。
「やっぱりスパイスですね。個々のスパイスは、強烈だったり、薬のように味気なかったりしますが、組み合わせによって味や香りが立ち、食材の持つおいしさが華やかになるので、魔法のような魅力を感じます」
「大事なのは配合。どれとどれをどれくらい合わせるといいか。入れるタイミングも大切です。シェフやコックは、スパイスの量を図ることなく、指先の感覚で入れていくので、そこも魔法のようです」
一方、日本人の自分がいるのだからと、定番のメニュー以外にも、日本の旬の野菜や産地にこだわった食材でシェフにカレーを作ってもらうことも。
「日本にしかない食材も、彼らの手にかかるとインド料理になり、美味しく調理してくれるのでうれしいですね。本日のおすすめメニューとして出すことが多いので、ぜひ食べてみてくださいね」
一緒にお店を立ち上げたブッダさんは、現在、カトマンズ(ネパール)でお店を経営。ほかにも西荻から巣立って、メルボルン(オーストラリア)や、国内でお店を開いているスタッフもいます。
カトマンズのブッダさんのお店
ブッダさん
「今、西荻窪にいるスタッフは、これからも日本で生活をしていく予定です。スタッフとスタッフの家族が安心して、楽しく、夢を持って働ける仕組みを作れたらいいなと思っています」
人との出会い、つながりを大切にする松岡さん。インド料理を通じて西荻から世界へ、七色に光る羽を広げ、ツルが羽ばたいていきます。
インド料理 ガネーシャガル
東京都杉並区上荻4-4-1
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